今は昔、20数年以上前の話。

神奈川県内の物件でした。

居住者は、老婆と、その息子で、40歳過ぎの債務者兼所有者の{A}です。

{A}は、任意の立ち退きの話し合いには一切応じません。
激しく怒鳴りまくって、話になりません。

仕方なく強制執行です。
催告にも耳を貸しません。

断行の日、現場近くで執行官、立会い、解錠技術者、執行補助者(実際に家財を搬出する人で、「執行補助者」といい、強制執行を断行する時の作業のプロ)等と待ち合わせ。

現場にいきますと、{A}が血相をかえて、スコップを下げてでてきました。
スコップを振り上げ、「(敷地に)入るな〜〜〜」、と叫びながら、殴りかかってきます。

執行官、「一時退避」、その場を離れます。

今のように携帯はありませんでしたが、公衆電話はアチコチにありました。
執行官が連絡をとっていました。

約1時間以上経過。

パトカーがやってきました。
そして、{A}は、パトカーにて、連行されました。

私も警察に呼ばれました。

「すみませんねー。ここしか空いていないので。」

テレビによく映りますね、刑事が犯人を追い詰めていく、窓が一つだけの陰気な部屋、です。

エッ、ひょっとしたらここは「取調室?」

小心者の私は、それだけで動転。

競売のことについて聞かれました。

ハイハイ、何でも喋ります。
もう、私の心象を良くする為なら、聞かれない事だって、ペラペラペラペラ喋っちゃってました。

こーいう部屋に通されますと、犯罪者ではないのに、なぜか卑屈になり、権力にはからきし弱〜〜い自分にガックリ・・・。

勘弁して下さい!何でもお話致します、ダッ、ンッ、ナッ、いや、お奉行さまあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・

現地では、強制執行が終了。

執行官から、引渡しを受け、一件落着。

ただ、老婆が、息子の帰りを待って、物件前の路上に、うずくまって動きません。

あとで聞いた所、気の毒に思った近所の人が泊まるようにいっても、息子はここに帰ってくるので、ここで待つ、といって、寒い中、動きません。

仕方なく、毛布を貸したそうです。

翌朝、帰ってきた息子と老婆は、どこかに行ったと言うことでした。


◎国家が行う強制執行の厳しさを知らなかった{A}の不幸なお話です。◎