今は昔。

千葉県の観光地を控えた駅から数分のところ、その地域では有名な老舗のお店が競売。
亡くなった娘の婿養子の放蕩三昧(ほうとうざんまい・・酒・女・バクチなどで、遊びほうけること)が原因、とは、近所の話。
勤務先の会社関連で落札。

債務者で娘婿の{B}さんが会社に来ました。

小さな森永キャラメルを1箱出してテーブルに置きました。

今日は宜しく、これはほんの手土産(てみやげ)がわりです。

私等社員数人は、キャラメルの箱を見つめて唖然。

人間、本当に驚くと、声も息もいっきに吸い込みます。
そして、息を止めて、事態を把握しようとします。
息を止めてる時間の長さは、驚きの深さに正比例するようです。

話し合いで、立退日、立退料が決定。

{B}さんとが帰ったあと、キャラメルを出した神経には皆妙に感心。

立退当日、家財は全部搬出され、車に詰め込まれました。

しかし、おじいさんが動きません。

座布団にすわり、目をつぶり、腕組みをしたまま、じっとしています。

「おじいさん、仕方ないだろ、さあ、車に乗って乗って。」

軽い命令口調の{B}さんの声を無視。

・・・無言・・・不動・・・。

さあ、{B}さん、どうします?

キャラメル1箱で煙にまくようなテクニック、持ってます?

ところが{B}さん、少しも騒がず、

おい、手を貸してくれ、

引越屋さんの社員に声をかけました。

座布団の角を4人で持ち、おじいさんが倒れないようにそれぞれ腕で支えながら、ヒョイヒョイと店頭にあるワゴン車まで運び、積み込んでしまいました。

地方で、代々続いた老舗を、自分の放蕩で、ピリオド。

少しはおじいさんに悪い、なんて感情は全くなし。

じゃあ、これで行くから、どう〜〜〜も〜〜〜♪♪♪

貸家から引っ越すように、今までの家に対する思い入れは丸でなく、サッサッと車に乗り込んで行きました。

これじゃあ、いい日旅立ち、蛙のツラに何とやら。

イヤ、ひょっとすると、婿養子の{B}さんにとっては、自分がリーダーとなっての本当の「旅立ち」だったかもしれません。