競売専門会社の社員だった頃の同僚のお話です。

彼は、親から引き継いだ会社を倒産させました。

浅草で、長年続いた老舗の問屋さんでした。

あっという間の短期間に、色んな出来事がありました。

家も何もかも失いました。

離婚もしました。

その後、債権者の追及をかわす為、逃げちゃったのです。

蒸発です。


そして何年かが経過。

その間、

面接時、人の過去をイチイチほじくらない、

真剣に履歴書をチェックしない職場を転々。

長かったのは、「ちり紙交換」。

新聞の束を、持っただけでピタリ重さが分ります。


ある日、渋谷のスクランブル交差点の端にいました。

店のチラシを配っていました。

最初、こんなに人が多い場所はヤバイなあ、まずいよ。

でも、債権者は浅草界隈。

まあ渋谷なら大丈夫か、とにかく仕事だし。。


チラシを差し出した腕を、突然掴まれました。

ギクっとして相手をみました。

倒産時、借金していた取引先の中国人でした。

とっさに、体は逃げようと反応、つかまれた腕を強く引きました。

流暢な日本語で、

「逃げなくてもいいですよ。ちょっとお茶でも飲みましょう。」


話の流れのなかで、

「お宅の借金、銀行ではね、恐らく貸倒引当金とか、

損金とかの名目で処理していると思いますよ。

うちもお宅の処理は終わっていますから。」

そして、

「ずいぶん苦労しているのですね。頑張りなさいよ。」

別れ際、何枚かの札をそっとポケットにすべりこませてくれました。


彼、

「終わってたんだ!」

腹の底から、明るさと力強さが噴き上げてくるのを実感しました。

そうして、自分の経験が幾らかでも活かせるかな、と思って、

競売専門会社に面接・入社しました。

勿論、面接時、持参した履歴書は、都合のよい事実だけを抜き書きしたものです。


現地調査に行って、債務者からの、どうしたらいいの相談件数は彼が断トツ。

彼、自分でも気付かぬ?うちに、魅力的な人間になっていたようです。






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