仮に、徳をしのんで「徳さん」(仮名)とよびます。


徳さんとは40年近い昔からの友人です。

共に、競売専門会社で学んだ仲です。

当時から、徳さんは本(競売の専門書とか判例集)は全く読みません。

ひたすら当事者に体当たりの真っ向勝負。


徳さんからのお中元が来ないなあ。

いつもならとっくに来ているのに、どうしたんだろう。

2週間以上前ですが、

そんな事を思っていたら、

奥さんからの連絡。

4月24日、死亡したとのこと。


ゲっ。

まだ75才前後のはず。


実は3年前からガンで、入退院の繰り返し。

但し、家族以外には絶対極秘。

昨年も一昨年も、徳さんとの会話は明るい笑い声。

そんな素振りは一切なし。

・・・・・・・・・・。


葬式は身内だけですましました。

(私に)連絡したかったのですが、

連絡先が全く分からず、

遅れてしまいました、という。


彼は、珍しい経験を何度かしています。

その一例です。


一戸建てを落札。

占有者は、債務者兼所有者の男性の独り住いです。

明渡交渉に出向いたら、

その男性は首つり自殺をしており、

その第一発見者となりました。

「いやあ、参ったよ」

それを聞いた、私を含めた友人は皆、

徳さんならなんとかするだろうが、

どんなまとめ方をするのだろう。

その物件は、

結局、隣地の方に買ってもらっていました。


彼、ユニークでした。


落札したのは借地物件。

地主は、前所有者の借地権を認めず、訴訟準備中。

その状態で競売にでていました。

入札者は徳さん一人.

落札。

たまたま開札期日、彼は裁判所にいました。

徳さんとは肌があわない知合いの業者が、

「さすが徳さん、良い物件を落としたねえ」

その言い方がどうも嫌らしいので、

問題があるのかな?


三点セットを持って相談にきました。

「地主は借地権は認めないとして訴訟をする予定だよ」

最低売却価額(今の売却基準価額と同義)も、

借地権がない場合の評価額が選択されています。


徳さん、

「それで安かったんだ!」


今まで、どの落札物件も、

三点セットなど真剣には見たことはない、と言います。


地主と直接交渉。

脅かしたりは絶対にしないし、できない性格。

ごちゃごちゃ話している内に、

何となく地主が折れて来、徳さんとの借地契約を承諾。

更に転売の条件についての承諾もしてくれました。


徳さんと話すと、明るい人柄に取り込まれてしまう人が多かった。

私もそのひとりです。

不思議な魅力を持っていました。
(本人は全く気付いていませんでしたが。)


私ら凡人の常識では絶対に拒絶する物件を何故か自然に選び、

転売に障害となる部分の(民間)当事者との交渉では、

いつの間にか相手に安堵感を与え、

別れ際は笑顔の握手。


とにかく、「落ち込む」という心理状態になったことがない人。

逆境でも、どんなに小さなプラス材料でも探し出して、

徳さん曰く 必ず見つかる ので、

それをたよりに前進、と言います。

(すべて成功している筈はないだろう、とは私ら凡人の観測ですが、失敗例は話しません。)


今、閻魔さま相手の交渉ではしっかり閻魔さまを煙にまいて、

徳さんの提示条件をすべてのんでもらって笑顔の握手。

きっと、あの世の「田園調布」に住んでいるのかな・・・・。

でも徳さんに田園調布はちょっと似合わないかなあ・・・ゴメンヨ。 

                                 
                                      合 掌
 


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